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ノイタミナオンデマンドCREATORS INTERVIEW

『ノイタミナ』に携わるクリエイター達にスポットを当てたインタビュー記事を公開

Special Interview

長井龍雪TATSUYUKI NAGAI

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PROFILE
『ハチミツとクローバー』第12話演出、『ハチミツとクローバーII』監督、『のだめカンタービレ』エンディング1、エンディング2絵コンテ・演出、『あの日見た花の名前を僕達はまだ知らない。』監督
ノイタミナで監督デビューできるとは、青天の霹靂でした

すべてがはじめての

経験だった初監督

ノイタミナも10年目になりました。長井監督が印象に残っている作品はありますか?

長井ノイタミナと最初に思うのは『ハチミツとクローバー』です。2作目が『Paradise Kiss』ときて、それで3作目が『怪 ~ayakashi~』になるのか……。『怪 ~ayakashi~』は衝撃的でしたね。三作構成というスタイルも新しかったし。次々と新しい作品をつくっていこうという勢いを感じました。自分は「ハチミツとクローバーII」で監督をさせていただいたこともあって、その時期にやっていたノイタミナの初期作品はほぼ全部見ているんですよね。だから作品だけでなく、ノイタミナの枠自体が印象に残っています。ノイタミナの枠として『ハチクロ』のときは特別番組を放送したり、カフェをやったり、タレントの方がアフレコをしたり……。たしか『ハチクロ』では犬のミドリちゃんをKABA.ちゃんが演じていましたよね。

そういえばノイタミナの初期作品ではタレントをキャスティングするということをよくやっていましたね。『のだめカンタービレ 巴里編』では髭男爵さんとか。

長井あと、アナウンサーの方々もたびたび出演されていましたよね。

さすが、お詳しいですね。いまお話があったように長井監督は2006年「ハチミツとクローバーII」で初監督。これはどんな経緯があったのですか?

長井「ハチミツとクローバー」の第一期は各話の演出でした(chapter.12)。たまたま第二期を制作するときで、第一期のカサヰケンイチ監督に別作品のお仕事があったようで、第二期の監督の声を掛けていただいたんです。青天の霹靂のできごとでしたね。当時はぎりぎり30歳前、29歳だったと思います。

30歳前の監督、ですね。初監督の現場はいかがでしたか?

長井いやー、緊張しましたね。監修としてカサヰさんに立っていただいていたので、ひとつひとつカサヰさんに教えていただきながら作業を進めていました。そういう意味では不安はなかったんですけど、すべてがはじめてで。アフレコに全話出席するというのもはじめてでしたから。挿入歌としてスピッツとスガシカオさんを使うことができたのもシャレオツな感じでしたし(笑)。とにかくすべてが印象深い作品です。

たしか、あの第二期のオンエア開始の時点では、まだ原作の漫画が完結していなかったと思うんですが。

長井そうでしたね。当時、連載一話分が半パートくらいのボリューム感で作業していたんです。最終話は羽海野チカ先生のネーム(構成案)があがってきたところで、黒田洋介さんがその場で脚本に起こし、それを僕が絵コンテにする。そういうスピード感で作業していたので、羽海野先生と黒田さん、黒田さんと僕というように、順に打ち合わせをしていっただけで、ほとんど打ち合わせらしい打ち合わせはなかったんじゃないかな。でも、おもしろい体験でしたよ。羽海野先生の生ネームを見ながら作業できるんですから。漫画家さんってかなり締め切りギリギリまでネームを練り込むんだとわかりました。作画の時間って予想以上に短くて。あのクオリティの絵をあれほど短時間で書いていると思うと驚きましたよ。

ノイタミナでつくることは

ハードルが高い?

「ハチミツとクローバーII」が終わったあと、長井監督は『のだめカンタービレ』のエンディングの絵コンテ、演出を担当しています。

長井Crystal KayさんやSUEMITSU & THE SUEMITH(SUEMITSU & THE NODAME ORCHESTRA名義)さんのようにメジャーな楽曲がエンディングだったので、さすがノイタミナだなと感心しつつ、ノイタミナって映像作家さんがオープニングやエンディングの映像をつくることが多いじゃないですか。それと比べらるんじゃないかと思うと、緊張しましたね。ノイタミナでエンディングを担当することは、かなりハードルが高い作業だなと。

『のだめカンタービレ』はオープニングも幾原邦彦さん(「代表作少女革命ウテナ」や「輪るピングドラム」)が担当していましたよね。

長井そうなんですよ。幾原さんがすごくカッコイイオープニングをおつくりになっていて。まさかこの状況でエンディングをつくらなきゃいけないのかと(笑)。すごくプレッシャーになっていました。

『のだめカンタービレ』ではエンディングが本編にオーバーラップしながら流れるなどすごくドラマチックに使われていましたね。

長井カサヰさん(『のだめカンタービレ』でも監督を務めた)は音楽の使い方がすごく上手いんです。『ハチミツとクローバー』のころから、音楽を前ノリ(本編にオーバーラップしながら先行して音楽をかける)で使ったり、いいタイミングで挿入歌をかけたり……僕も音楽の使い方をいろいろと学ばせていただきました。

カサヰ監督と長井監督。『ハチミツとクローバー』ではじまった関係が、『のだめカンタービレ』につながる。ノイタミナ作品の中にドラマがあったんですね。

長井自分の監督人生のはじまりがノイタミナ作品ですからね。ノイタミナもいよいよ10年目ですか。自分の監督生活ももうすぐ10年になると思うと……早いですねえ(笑)。

恥ずかしさを吹っ切る

ことができた作品

『ハチクロII』から5年が過ぎた2011年『あの日見た花の名前を僕達はまだ知らない。』で長井監督がノイタミナに帰ってきます。

長井『あの花』は最初からノイタミナ枠と決まっていたわけではないんです。。正直、ノイタミナになってうれしかったんですよね。ぶっちゃけ、あの作品は実験作の感じがあって。普通の深夜アニメとして並列に放送されると、違和感が大きそうだなと危惧していたんです。でも、ノイタミナなら許してもらえそうだなと。ノイタミナは深夜放送といっても時間が浅いですし。。そういう意味では一番良いかたちでオンエアすることができたと思っています。

放送がノイタミナに決まったことで企画中の『あの花』の変更点はありましたか?

長井音楽、ですよね。ソニーミュージックのプロデューサーさんが「秘密基地というなら、こういうことじゃないの?」とZONEの『secret base~君がくれたもの~』 を候補曲にあげてくださったんです。正直、最初は恥ずかしかったですね。

恥ずかしかったんですか?

長井すごく良い曲なんですが、あまりにも歌詞がマッチしすぎていて(笑)、ちょっとこれはどうだろうと思うほどだったんです。「でも恥ずかしくてもやっちゃおうよ」と。あの曲に決まった瞬間に、吹っ切れた気がします。

ノイタミナとしては、声優さんがエンディング曲を歌うというスタイルも異例で、吹っ切った楽曲だったんでしょうね。

長井オープニング・テーマのGalileo Galileiさんの「青い栞」もすごくよくて。あのオープニングにあう空の色を描くために、美術のスタッフに「高度2万メートルくらいのきれいな空の色を塗ってください」とお願いして。現実にありえなくても、すっきりと見えるようにお願いしました。

(続く)

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