『ノイタミナ』に携わるクリエイター達にスポットを当てたインタビュー記事を公開
共同作業の中における
脚本のありかた
ノイタミナのスタッフと作品をつくることは、岡田さんにとってどんな経験でしたか?
岡田ノイタミナのプロデューサーって「すれていない」んです。ただ、それがこのノイタミナという枠が、アニメのメインストリームからハズれている部分でもあるんじゃないかと思うんですよね。もちろんみなさん、たくさん仕事をしていらっしゃるし、おそらく計算をして行動していらっしゃるんでしょうが、作品に対する考え方が純粋。本気度が高いし、前のめりになって作品を愛してくれるんです。だって……ホン読み(脚本打ち合わせ)の段階で泣いてくれるんですよ。
おお!
岡田アニメは共同作業だから、多くのスタッフが手をかけた最終的な仕上がりこそが全てであって、素材として機能する脚本を書いていきたいと思っていたんです。今もその気持ちは変わりませんけど、その素材状態の段階で、プロデューサーが泣いてくださるような反応があると、やっぱりうれしいですよね。脚本は素材ではあるんだけど、その脚本を受け取った次のスタッフの胸をいかに打つか……ということも大事なんだなって。そういう流れが生まれると、現場が妙に盛り上がるというか。その勢いがこのあとのスタッフに伝わるということもあって。そういうことを、すごく学ばせていただきましたね。
興味深いです。集団作業における、脚本の役割を意識したということですね。
岡田たとえば脚本の作法として、「脚本のト書き(説明文)が多いと、次のスタッフの想像力を奪ってしまう」と言われていたことがあるんです。だけど、大事なことは、その脚本を読んだ次のスタッフが「この表情を描いてみたい」と思えるかどうかだと、私は思うんですよ。もしかしたらト書きの見せ方に工夫をすることで、「もっとこうしてみたい」とさらに奥へ一歩踏み込めるかもしれない。そういうことを考えるようになりましたね。もちろんどの方法論が正しいかということではなくて、自分がどういう方向性の作品をつくりたいかってことだと思うんですけど。
4作品に込めた想いと
当時の気分
では岡田さんがノイタミナで関わられた作品について、一作ずつ伺ってもよいですか?まずは『フラクタル』。
岡田人っておもしろいなと思える作品でした。人と人が交わることで化学反応的に作品が生まれていく。アニメって本当に多くのスタッフが関わっていて、役職や部署によって仕事が忙しくなるタイミングが違うものなんですが、でも、この作品はほぼ同時期にみんなが一生懸命に仕事をしていたんです。山本寛監督をはじめとした現場だけでなく、普段はあまり知ることのないプロデューサー陣の頑張りとかもよく見えて、得るものが多かったなと。個人的に好きなところの多い、美しいところのある作品だなと思っています。
『放浪息子』は映像も内容も研ぎ澄まされた作品でしたね。
岡田志村貴子さんの原作が大好きで。もともとの思い入れが強いぶん、映像化することへの不安もあったんですが、出来上がった映像はとてもすばらしくて感動しました。第1話には原作にないオリジナルのシーンがあるんですが、原作にあるシーンに負けないくらいの力を入れてくださったのもうれしかったです。あおきえい監督は、私がアニメの仕事をする前から知っていて。昔から知っていたけど、いっしょに仕事をしたことのない方と、ついに仕事ができたというのはうれしかったですね。
『あの日見た花の名前を僕達はまだ知らない。』は長井龍雪監督、田中将賀さんのトリオでしたね。
岡田この2人との仕事は、なんだか不思議ですね。まず、トリオと言われるのも不思議だし(笑)。年齢が同じということもあるのかもしれないけれど、考えることや置かれた状況、抱えている問題がちょうど似たところにあったりするんです。悩みとか相談すると、同じようなことを悩んでいたりもするし。2人から頂いたものはすごく大きいので、今後も何かしらお返ししていきたいし、2人が困っているときは手伝いたいという気でいます。この3人でやれたというだけでなく、いろんな面で幸せな作品でしたね。
『ブラック★ロックシューター』はいかがでしたか?
岡田『あの花』は一番最初から参加していた作品で、『ブラック★ロックシューター』は一番最後に参加した作品。そういう意味でも対照的でおもしろかったし、吉岡忍監督や今石洋之CG特技監督、キャラクター原案のhukeさんの仕事がすごく刺激的でした。山本幸治プロデューサーからは「いちばんエッジのあるものをやってほしい」と言われて、余計なことを考えずに振り切れた作品です。ホン読み(脚本打ち合わせ)のときに「マカロン」が差し入れされたのが嬉しかったです(笑)。
ノイタミナの良いところと
悪いところは……
2011年のノイタミナラインナップ発表会のテーマは「クリエイター」。岡田さんの関わっている3作品の監督が壇上にあがってトークをしましたね。
岡田あのとき私は出席していないんですけど、実は舞台裏にいたんです。3作品の監督が心配で心配で(笑)。もう仕事どころじゃない感じ。当時は「(監督のフォローなんて)たまったもんじゃない」と感じていたんですけど、なんか今振り返るとすごくおもしろかったな。青春って感じでした(笑)。
ノイタミナの良いところと悪いところがあれば、ぜひお聞かせください。
岡田いいところは「すれてないところ」。悪いところも同じですね(笑)。素直すぎる。もうちょっとズルく立ちまわってもいいと思う。みんな素直だから「おもしろい」と思うものに反応してくれるんだけど、そのために傷ついていることもあるんですよ。誤解されることも多いので、そこはすごく心配していますね(笑)。ここ数年、ノイタミナがいろいろな作品をやっているのは「すれていく」過程なのかもしれないですけど。
ノイタミナでやってみたいことはありますか?
岡田山本プロデューサーと話していると、私が本当にやりたいことは、やらせてもらえないんです。なんか、私に厳しいんですよね(笑)。なので、きっと無理だとは思うんですが……子ども向けをやってみたい。
良いですね!
岡田夜にオンエアされる子ども向け。帯番組みたいな、短い尺のシリーズをやってみたい。
いいですね。実現したら、新しいノイタミナのラインナップになるかもしれませんね。
岡田だから、私にもっと優しくしてください(笑)。
(終わり)